好きな作品の伏線は延々と説明できる。なのに、登場人物の名前を聞かれた瞬間、止まる。
「あの、最後に橋のところで、赤い上着の……」
説明は長いのに、名前だけ出てこない。こんな架空の場面なら、何が言えて何が言えなかったかは、ずいぶん違う。
勉強でも、「理解できた気がするのに答えを書けない」「単語は出るのに説明できない」は分けて見たい。どちらか一度つまずいただけで、自分の頭のよしあしまで決める必要はない。
では、次の勉強では何を変えられるだろう。
まず「何ができればよいか」を決める
読めば分かることと、何も見ずに答えられることは同じではない。名前を正確に言うことと、仕組みを説明することも違う。
たとえば、覚える項目について次の三つを分けてみる。
- 用語や数字を、正確に答える必要がある
- 自分の言葉で、意味を説明する必要がある
- 条件が変わった例に、当てはめる必要がある
全部必要なら、全部を確かめる。意味が分かれば用語は適当でいい、とも、用語を言えれば理解も十分、とも決めない。
早押しで答える遊びと、時間をかけて説明を書く課題では、練習したいことも変わる。ある一回の結果を、能力全体の判決にするより、どの部分を練習するかに戻った方が次の手を選びやすい。
「自分はこの型」と、先に決めなくていい
意味を考えながら勉強するのが好きでも、「構造理解型だから暗記はいらない」とまでは言えない。
好みは、方法を試すきっかけにはなる。ただし、好きなやり方で気持ちよく勉強できたことと、あとで必要な答えを出せたことは、別に確認したい。
学習スタイルに合わせれば最適、という教え方を十分に支える証拠は、レビューでは見つかっていない。Pashlerらのレビュー
人による違いが一切ない、という話ではない。ここで大事なのは、自分に付けた名前だけで、試してよい方法を狭めないことだ。
単語カードが合う項目もあれば、図や具体例が役立つ項目もある。教材を選ぶ前に、自分専用の脳タイプを確定させなくていい。
説明を作ったら、一度閉じてみる
ここからは、学んでいる項目を一つ選んで試せる手順の例だ。
まず、教材を見ながら「何のことか」を短く書く。次に、自分で考えた具体例を一つ付ける。その例が本当に説明に合うか、教材に戻って確認する。
そこまでできたら、いったん教材とメモを閉じる。
「用語は何だったか」「どういう意味か」「さっきの例はなぜ当てはまるのか」を、見ずに答えてみる。出てこないところがあれば、そこだけ元の説明を確認する。
検索すれば答えはある。でも今知りたいのは、検索画面が答えを持っているかではなく、自分がどこまで取り出せるかだ。
思い出す練習が、時間を置いた後の保持に役立った実験結果もある。RoedigerとKarpickeの研究
試すときは、間違えた説明をそのまま採用せず、正確な教材と照らし合わせよう。うまく言えた気分より、どこが合っていたかを確認する。
次に確かめる日を、残しておく
その場で答えられたら、次に見直す予定も書いておく。たとえば別の日に同じ質問へ答える、という試し方がある。
学習を分ける間隔と、どれくらい先まで覚えたいかは、保持の結果に関わる。Cepedaらの研究
だから「必ず翌日、その次は何日後」と、全員に共通の正解日程をここで決めるつもりはない。使う時期や範囲に合わせ、実際に答えられたかを見て調整する。
確認の記録は短くていい。「用語は出た。例外の説明は混ざった」。これなら次に開く場所が分かる。
全部に同じ蛍光ペンを引いて、本全体を発光させるより、今迷った二行に戻る目印を残したい。
メモは「保存した」で終わらせない
思いつきや仕事の確認事項は、手元のメモに出しておく方法もある。ただ、書いただけで実行や理解が済むわけではない。
「調べる」とだけ残すより、「何を、どこで確認し、次に何を決めるか」まで一行足す。教材の要点なら、ページや出典も添えておく。
あとで検索できる見出しにすることも大事だ。「大事なメモ最終版その2」だけでは、書いた本人も発掘調査を始めることになる。
AIを整理の補助に使う場合も、利用が認められた範囲にとどめ、個人情報や秘密の資料を無断で入れない。できた要約は元資料と照合する。整った文章が返ってきたことと、自分が理解できたことも分けて確かめたい。
自分の型より、次の一問
丸暗記が苦手だと感じたら、まず一つの項目で、意味を説明し、見ずに答え、間違いを確かめてみる。
意味を考えることと、正確に思い出すことを対立させなくていい。メモを使うことと、自分の中に知識を残すことも両立できる。
自分をほめるために新しい能力名を付ける必要も、責めるために悪いラベルを貼る必要もない。
今日出てこなかったのは、名前なのか。説明なのか。使う場面なのか。
そこが一つ分かれば、次の勉強で確かめることが決まる。
