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年金の世代間格差はなぜ不公平?「若い100万円」と老後の価値の違い

「今の100万円と、40年後の100万円。どちらが欲しい?」と聞かれたら、すぐに答えられない人もいるだろう。30歳なら引っ越しや学び直しに使える。70歳なら医療費や暮らしの安心につながる。同じ額でも、いつ手元にあるかでできることが違う。

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「今の100万円と、40年後の100万円。どちらが欲しい?」と聞かれたら、すぐに答えられない人もいるだろう。30歳なら引っ越しや学び直しに使える。70歳なら医療費や暮らしの安心につながる。同じ額でも、いつ手元にあるかでできることが違う。

年金の世代間格差に引っかかるのは、「若者が損で高齢者が得だから」と一言で片づけられる話ではない。負担をする時期と保障を受ける時期が遠く離れ、その間に人生の選択肢も変わるからだ。

ただし「40年後に100万円返すから、今100万円払え」は、問題を考えるためのたとえ話。公的年金は、自分専用の積立口座でも、払ったお金がそのまま返ってくる定期預金でもない。 ここを混同すると、怒る相手を間違えてしまう。

年金は、自分の貯金箱ではなく世代をまたぐ保険

日本の公的年金は、働いている世代が納めた保険料などを、その時点で年金を受け取る人の給付に使う仕組みが基本だ。高齢になったときの老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金もある。

だから年金を「払った総額に利息をつけて返してくれる投資商品」と比べて、利回りだけで合格・不合格をつけることはできない。若い人でも、現役時代から障害や家族の死亡に備える保障を受けているからだ。

それでも「保険だから公平さを疑うな」と言われたら、そこで話が止まってしまう。保障を社会全体で支える必要性と、世代間で負担や給付がどう配分されるべきかは別の問いだ。

若い100万円には、あとから買えない選択肢がある

若いころの100万円があれば、転居、資格取得、子育て、住宅の頭金、事業の準備など、今しかできないことに使える可能性がある。老後の100万円にも、家計や医療・介護の安心という大事な役割がある。

「若いうちのお金の方が絶対に偉い」という話ではない。生活に困っている人なら、何歳でも目の前の100万円は切実だ。大切なのは金額と一緒に、使える時期と必要性を見ること。

金融の世界には「お金の時間価値」という考え方がある。早く持てば運用などの選択肢が増えるという意味だ。ただし資産運用の利益は保証されないし、公的年金の価値を市場の利回りだけで測ることもできない。

年金の話でも、「老後にもらえるなら今の負担はすべて帳消し」と単純に足し算すると、若い時期の機会を見落とす。

「今の高齢者がいなくなれば解決」ではない

「今の受給者がいなくなったら、負担は軽くなるのでは?」と思うかもしれない。しかし、世代は順に年を取る。今の現役世代も、いつか年金を受け取る側になる。

しかも、年金財政は賃金、物価、働く人の数、長生きする人の数などに左右される。制度の持続可能性は定期的に検証され、将来の給付水準について複数の経済前提を使った見通しが示されている。

だから見るべきなのは「年金は必ず消滅する」「今の若者は全員払い損」という断定ではなく、どんな条件で、どの程度の保障が続くと見込まれているのかだ。

高齢者の中にも生活が苦しい人がいる。若い世代の中にも資産に余裕がある人がいる。年齢だけで敵味方を決めると、実際に支援が必要な人を見失う。

相続も「お金が届く時期」の問題になる

住宅を買いたい30代と、親が亡くなり相続を受ける60代。どちらにとっても資産は役に立つが、使う場面は同じではない。

「もっと早く資産を移せないか」と考えるのは自然だ。ただし、親から十分な援助を受けられる人ばかりではない。生前贈与を増やすだけでは、資産のある家とない家の差が広がる場合もある。

ここでも「早く渡せば解決」ではなく、必要な時期に資金を届けることと、家庭の資産格差を固定しないことを一緒に考えたい。税制の特例や限度額は改正されるため、実際の贈与を考えるときは国税庁の最新案内で確認する必要がある。

年金と相続は違う制度だが、「必要になったころには、まだ手元にない」というすれ違いを考える材料になる。

世代間の公平さは、額だけでなく負担と時間で比べる

何が公平なのかを考えるなら、少なくとも三つのものさしがいる。

第一に、誰がどれほど負担できるか。第二に、誰がどれほど保障を必要としているか。第三に、いつ支援が届くのか。

高齢者への保障を減らせば、今すぐ暮らしが立ちゆかなくなる人がいるかもしれない。現役世代への負担を増やせば、住宅や教育などの選択を諦める人が出るかもしれない。だから、一方を悪役にしただけでは設計できない。

「将来あなたにも返ってくるから、今は我慢して」という説明に違和感があるなら、その違和感を三つのものさしで具体化してみる。制度を全廃するかどうかの二択より、何を直したいのかが見えやすくなる。

お金には額だけでなく、納期がある。 老後の100万円を守りながら、若い時期にしか開けない扉もどう支えるか。それが年金の世代間格差を考えるときの、本当の争点だ。

主な参考資料

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