「名古屋港に客室1,500室のクルーズ船がいる。空いている部屋を1室だけ安く借りられない?」
海の上に巨大ホテル。しかも動かない。これはもう、夢の格安マンスリーマンションでは?
ところが予約サイトを探しても、そんなプランは出てこない。船には客室があった。でも、一般客に売る客室はなかった。
本当にホテルになった。泊まったのは選手団
2026年9月、アジア競技大会のために大型客船「コスタ・セレーナ」が名古屋港・金城ふ頭へやってきた。9月15日に入港し、16日から選手団の受け入れを開始。宿泊施設としての運用は10月6日までの22日間が予定されていた。
客室は約1,500室。大会期間中、約4,000人の選手・関係者が利用する計画だった。大会側は大きな選手村を新設する代わりに、既存の宿やこの船を使う方式を採った。
つまり、船がホテルになったのは本当。ただし売り先は、旅行者ではなく大会の宿泊を取りまとめる組織だった。
「空室あります?」以前に、売り場がない
普通のホテルなら、空室があれば宿泊予約サイトや公式ページで予約できることがある。
今回のホテルシップは違う。船を大会の宿泊施設としてまとめて確保し、登録された選手や関係者に部屋を割り当てる。公表された情報では、一般旅行者向けの宿泊予約枠は設けられていなかった。
客「1室だけ、3,000円で」
大会「1,500室を使って選手団の宿泊を運営しています」
客「じゃあ余った1室を」
大会「そもそも一般販売してないです」
船の部屋が空いているかと、誰でも買える商品かは、まったく別の話なのだ。
大きい船なら安い、とはならない
公開資料にある契約額は約44.9億円。これは乗員や船内の運営などを含む大きな契約で、単純に客室数で割って「一泊いくら」とするのは誤解を招く。
停泊中も、食事、清掃、設備の運転、安全管理には人と費用がいる。しかも大会用なら、輸送や警備を含めた全体の動きに合わせる必要がある。巨大な船は客室数もすごいが、維持する仕組みも巨大である。
個人が2か月ほど同じ街に住むなら、マンスリーマンションや短期契約可能な住まいを探す方が目的に合う。普通の長期クルーズは、そもそも港から動いてしまう。
船は浮いていた。格安予約枠は浮いていなかった
選手村を一から建てず、必要な期間だけ一度に大量の部屋を用意する。主催者から見ればホテルシップはかなり理にかなう。
でも、旅行者が求める「安く泊まれる部屋」とは別の商品だ。
1,500室もあるのに予約できない理由は、満室だからとは限らない。最初から一般客用の売り場がなかったから。
海上生活の夢は残る。ただし今回の船に関しては、夢のチェックイン窓口が存在しなかった。
参考資料
- アジア大会の選手団宿泊とコスタ・セレーナ入港(東海テレビ、2026年9月15日):https://www.fnn.jp/articles/-/1114948
- 9月16日の宿泊開始と10月6日までの予定(フネコ、2026年9月20日):https://funeco.jp/news/news-33606/
- 宿泊契約と一般予約枠(HotelBank、2026年9月15日):https://hotelbank.jp/supply-pipeline/asian-games-2026-hotelship-nagoya-port-1500rooms/
