「予定が分かったら連絡します」
「いつ分かりそう?」
「分かりません」
このやり取りを見て、「明日の予定を前日の夜に送ってくるかも」と予想した。すると後日、本当に「明日の午前なら行けます」と連絡が来た。
読心術に目覚めた? いや、読めたのは相手の心ではない。予定の決め方だ。
当てたのは「気持ち」ではなく「段取り」
相手はいつ空くか分からないと言った。そこで分かるのは、今の時点で予定を確定できていないことだけだ。
でも、それを聞けば次の展開はいくつか考えられる。前もって見込みを知らせる人もいれば、空いたと分かった瞬間に「明日どう?」と連絡する人もいる。今回の予想は後者だった。
だから「前日連絡が来そう」は仮説として成り立つ。ただし「私を大事にしていない」「仕事が雑」「嫌われている」まで飛ぶのは別の話。返信が遅い理由は忙しさかもしれないし、家族の予定かもしれない。心の中には入場券がない。
もっと役に立つのは、繰り返す癖
一度予想が当たっただけでは、偶然の可能性もある。次も同じとは限らない。
見るなら、似た場面での行動だ。何日前に予定を決めるか。無理なときに代わりの日を出すか。変更が分かったらすぐ伝えるか。こうした行動が何度も続けば、次の連絡の時期を考える手掛かりになる。
研究でも、短い行動観察がその後の結果と関係する場合がある。ただし、AmbadyとRosenthalの1992年の研究をまとめた分析に出てくる「r=0.39」は的中率39%ではない。観察からの判断と実際の結果の関連を示す数字で、「この人は何%の確率で明日連絡する」という数字ではない。
経験豊富な人の勘にも条件がある。KahnemanとKleinは、学べる規則性があり、予想の答え合わせをできる環境なら、直感が磨かれうると整理した。外れた予想まで確認してこそ、勘は育つ。
当てるより、予定を守るほうが大事
「きっと前日になる」と思ったら、相手を責めるより先に自分の予定を守れる。
たとえば、こう伝える。
「木曜の夜までに分かったら教えてね。難しければ今回は別の予定を入れるね」
相手には直前まで決める自由がある。こちらにも、いつまでも日程を空けて待たない自由がある。予測は相手を操る道具ではなく、予定を組むための道具だ。
当たる自信があるなら、予想した日と実際の連絡日を数回メモしてみてもいい。外れも数える。的中した瞬間だけを集めたら、誰だって自称予言者になれる。予言者の天敵は、地味な記録である。
結局、人の心は読める?
読めない。ただ、同じ状況で繰り返す行動は、次の行動のヒントになる。
「いつか連絡します」から前日連絡を予想するのは、超能力より少し地味な観察だ。役立つのは相手の本音を決めつけることではなく、予定に締め切りと代案を用意すること。
人間の未来は見えない。でも、カレンダーの使い方なら、ときどき見える。
参考資料
- Ambady, N., & Rosenthal, R. (1992). Thin slices of expressive behavior as predictors of interpersonal consequences: A meta-analysis. https://doi.org/10.1037/0033-2909.111.2.256
- Ouellette, J. A., & Wood, W. (1998). Habit and intention in everyday life. https://doi.org/10.1037/0033-2909.124.1.54
- Kahneman, D., & Klein, G. (2009). Conditions for intuitive expertise: a failure to disagree. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19739881/
