火曜深夜、日付が変わって水曜午前1時。サカナクションの山口一郎が『オールナイトニッポン』で話している。ライブもするし、曲も作る。画面だけ見ると「もう完全復活?」と言いたくなる。でも、本人の説明はもっと複雑だ。昔の自分に戻るつもりはないという。 どういうこと?
休みたくなかった。それでも休むしかなかった
2022年7月、サカナクションの公式サイトは山口の休養を発表した。強い倦怠感が続き、本人は音楽活動を続けたかったものの、医師の判断で休養を優先した。その年の9月にはライブ予定を取りやめ、まずレギュラー番組などから少しずつ活動を再開すると案内している。
「本人のやる気が戻ったら復帰」という単純な話ではない。やりたい気持ちと、実際に動ける体調は別物だった。
ラジオは「完治しました」の記者会見ではない
2026年4月、山口は毎週火曜深夜の生放送を始めた。初回放送では、病気について医師と相談し、仕事の予定も調整すると説明した。また、病気になる前の状態へ無理に戻ろうとするのではなく、新しい自分になっていく考えを語った。
これ、ゲームなら「古いセーブデータを読み込む」ではなく、「現在の状態で新しい遊び方を見つける」に近い。もっとも、現実の病気には都合のいいロード画面なんてない。
ラジオで元気に話す2時間があっても、24時間ずっと元気だとは限らない。7月にも山口は、症状の揺り戻しを海の満ち引きのような波にたとえている。外から見える出演と、日々の体調を同一視しないことが大切だ。
それでも、なぜラジオなのか
山口は番組開始前、気持ちが弱った夜にラジオや音楽が誰かの頼りになれたらという思いを話していた。話すこと、聴き手とつながること、そこから音楽が生まれること。本人にとってラジオは、バンド活動とは別の余興ではないようだ。
だから答えは「治ったから戻った」だけでは足りない。今の自分に合う形を探しながら、やりたい音楽を続ける。その試みの一つが深夜ラジオなのだろう。
「完全復活」の大きな札を掲げるより、来週もまた放送できるほうが大事なこともある。
