『ソフィーのアトリエ』の「薊蓮花」を久しぶりに聴いて、また再生ボタンを押してしまった。やわらかな絵柄の錬金術ゲームから、こんなに熱い曲が飛び出してくる。その落差がたまらない。
曲名は、一般に「あざみれんげ」と紹介されている。漢字だけでは、初見で読むのが難しい。名前には少しつまずくのに、幻想的な旋律と激しいギターが重なる感触は、すぐ耳に残る。[1][2]
私はライザを途中まで遊んだきりで、ソフィーは未プレイだ。それでも、この曲を好きだという気持ちまで取り下げる必要はないと思っている。ゲームを最後まで遊ぶことと、その音楽に心をつかまれることは、別の話だからだ。
かわいい世界に、急に決戦の熱量が流れ込む
アトリエシリーズを見た目から想像すると、まず浮かぶのは穏やかな日常だ。錬金術士が街の人と話し、素材を集め、釜の前で調合する。花や柔らかな色、童話を思わせる衣装も、その印象を支えている。
ところが、戦闘曲に耳を向けると景色が変わる。私がアトリエの音楽に感じる魅力には、こんな要素がある。
- 民族音楽を思わせる旋律
- 前へ押し出すようなギター
- 疾走感のあるドラム
- 緊張や広がりを加えるストリングス
- 曲によっては、コーラスが生む壮大さ
- いまにも決戦が始まりそうな盛り上がり
もちろん、すべての曲にこれらがそろうわけではない。「薊蓮花」について特に好きなのは、繊細な雰囲気が消えないまま、激しさが前へ出てくるところだ。かわいい世界を壊すというより、その奥にあった熱量を突然見せられる感じがする。
こういう、聴くと気分が一気に上がる曲を、私は冗談めかして「ドパソング」と呼びたくなる。ここでの「ドパ」は高揚感の比喩であって、この曲がドーパミンをどれだけ増やすかを示す医学的な説明ではない。
「薊蓮花」は、ゲームより先に好きになれる曲
「薊蓮花」は『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~』の楽曲だ。配信されているオリジナルサウンドトラックのDISC 3では18曲目に収録され、アーティスト欄には浅野隼人の名がある。[1]
ゲーム音楽のファンがまとめる資料でも、読み方や戦闘曲としての位置づけ、繊細な旋律とロックの激しさの組み合わせが紹介されている。[2] ただし、ファンの間で話題になることと、世間全体で広く知られていることは同じではない。投稿動画の数や再生数だけで、曲の人気やゲームとの知名度の差まで決めることもできない。
私にとって大事なのは、人気の順位より、ゲームを遊ぶ前でも曲が届くということだ。本編を知らないからこそ、最初は音の勢いや旋律そのものに引き込まれる。物語の意味を理解してから聴けば、また違った印象になるのかもしれない。
いまは曲だけが先に好きになっている。それも、作品との出会い方の一つだと思う。
長く続くシリーズと、ライザから入った自分
アトリエシリーズは2022年5月に25周年を迎えた。[3] 長い歴史があっても、すべての作品を同じように知っているわけではない。少なくとも、私にとっての入口はライザだった。
「ライザのアトリエ」3作品からなる「秘密」シリーズについて、コーエーテクモゲームスは2023年6月27日、世界累計出荷200万本の突破を発表している。これは3タイトル合計の、パッケージ出荷本数とダウンロード販売本数を合わせた数字だ。同じ発表では、2023年7月からのテレビアニメ放送も案内されていた。[4] 200万本は当時の発表値であり、現在の累計本数を示すものではない。
こうした展開を見ると、ライザにはゲーム本編以外から触れる入口もあったことがわかる。ただ、どれほど一般層へ認知が広がったかを、ここで数値として測れるわけではない。
私も先に印象へ残ったのはキャラクターデザインだった。ゲームを買って、途中までは遊んだ。それでも、調合や素材集めを最後まで続けるところまではいかなかった。
その一方で、音楽は繰り返し聴いている。シリーズとの付き合い方が、遊ぶことから聴くことへ少し移ったのだと思う。
ライザを先に見ると、ソフィーの絵柄も違って見える
ライザのデザインを先に知ってからソフィーのイラストを見ると、ソフィーのシルエットはずいぶん繊細に感じられる。これは優劣や健康状態の話ではなく、衣装や線、形がつくる視覚的な印象の違いだ。
一人の主人公をシリーズ全体の基準にしてしまうと、別の作品を見たときに驚く。その意味では、私の中の「アトリエらしさ」も、最初に知った作品にかなり引っ張られていた。
「薊蓮花」の勢いとソフィーの柔らかな絵柄が並ぶと、その思い込みがさらに揺さぶられる。見た目は穏やかなのに、耳へ届くものはずっと熱い。この視覚と音楽の落差が、曲の印象を強くしているのだと思う。
ゲームに飽きても、音楽まで手放さなくていい
ゲームを途中でやめると、その作品全体を好きではなくなったように感じることがある。でも、作品の魅力は一つの塊ではない。
- キャラクターには惹かれる
- 世界観を眺めるのは楽しい
- 音楽は何度でも聴きたい
- 調合システムは、自分には合わないことがある
- 周回や素材管理には疲れることもある
これらは同時に成り立つ。調合が好きな人にとっては、その工程こそ楽しさの中心だろう。私には続かなかったとしても、ゲーム全体の欠点だと決めつける必要はない。
そして、音楽を聴く前にクリア実績を提出する必要もない。素材を集め直さなくても、装備を整えなくても、再生ボタンを押せば好きな旋律に戻れる。
ゲームの中で聴く体験には、物語や戦闘と結びついた良さがある。サウンドトラックだけを聴く体験には、曲へ集中できる良さがある。どちらかだけが正しい楽しみ方というわけではない。
私の場合、ゲーム本編から離れたあとも残ったものが、アトリエの戦闘曲だった。
「かわいい」だけでは収まらない音楽の強さ
花、釜、素材、かわいい衣装。その見た目から入ってきた耳へ、ギターやドラム、幻想的な旋律が飛び込んでくる。アトリエの音楽を好きな理由を短く言うなら、私はこの落差を挙げたい。
ライザを途中までしか遊んでいなくてもいい。ソフィーが未プレイでもいい。最初は「薊蓮花」の読み方がわからなくてもいい。
知っていることが少ないなら、少ないままで「この曲が好きだ」と言える。気になったらサウンドトラックや作品へ、もう一歩近づけばいい。
読み方を覚えて、また「あざみれんげ、やっぱりいいな」と再生してしまう。かわいい世界の中に、こんな熱さがある。その発見だけでも、音楽からアトリエに触れた意味は十分にある。
参考資料
[1] Amazon Music「薊蓮花」配信情報:『ソフィーのアトリエ』オリジナルサウンドトラック DISC 3(作品名・曲名・収録位置・アーティスト表記の確認)。
[2] みんなで決めるゲーム音楽ベスト100まとめwiki「薊蓮花」(ファン編集の二次資料。読み方と曲の紹介を参照し、公式の人気調査としては扱わない)。
[3] コーエーテクモゲームス「アトリエ」シリーズ25周年記念サイト(2022年5月の25周年を確認)。
[4] コーエーテクモゲームス「『秘密』シリーズ全世界累計出荷200万本突破!」2023年6月27日(3タイトル合計・集計定義・当時のアニメ放送予定を確認)。
