「今まで払った家賃、合計500万円だって」
数字だけ聞くと、急に家を買いたくなる。「500万円あれば、何か買えたんじゃない?」
でも待って。その500万円、何年分ですか。 家賃の合計額だけで損得を決めるのは、レストランで「今までの食費が100万円」と聞いて「なら店を買えばよかった」と言うようなものだ。
500万円を「ひと月いくら」に戻す
仮に家賃の合計が500万円だったとする。
10年住んだなら、ひと月あたり約4万1,700円。15年なら約2万7,800円だ。どちらも例であり、実際の家賃が同じだったという意味ではない。
500万円という大きな数字より、その金額で何年間、どんな家に住めたかのほうが比較に使える。
家賃を払っても家は自分のものにならない。でも、雨風を防ぎ、生活し、引っ越したくなったら動きやすい。その時間と自由を買っている。購入した家だって、何年暮らしたかを無視して値札だけ見ても意味がない。
持ち家にも「戻ってこないお金」がある
「ローンなら払った分が全部資産になる」は間違いだ。
ローンの元金を返せば借金は減る。ただし、利息、固定資産税、火災保険、修繕費、購入や売却の手数料は別にかかる。マンションなら毎月の管理費と修繕積立金もある。
しかも、売るときの値段は買ったときと同じとは限らない。
家賃だけを『消えるお金』と呼ぶなら、持ち家の経費にも出席してもらわないとフェアじゃない。 比較会議に片方の請求書しか持ってくるな。
部屋を増やすと、使わない床も買う
一人か二人で暮らし、広い家を使い切らないなら、床面積を増やすほど費用が増えやすい。
「いつか使うかも」で買った部屋が、10年後に段ボールの待合室になることもある。家は広い方が絶対に得、とは言えない。広い家に価値を感じる人もいるし、狭い部屋で十分な人もいる。
小さな中古マンションを選ぶ場合は、価格と内装だけでなく、修繕の計画や積立金、管理組合の運営も大事だ。国土交通省の管理計画認定制度も、こうした管理の状況を判断するための一つの手掛かりになる。
じゃあ、買うか借りるかは何で決める?
同じ地域で長く暮らす予定があり、十分な貯蓄を残して買え、必要な広さと建物の管理状態に納得できるなら、購入が合うこともある。
転居する可能性が高い、今の家賃が安い、まだ必要な広さが決まっていないなら、賃貸の自由が役に立つこともある。
比べるのは、同じ期間に住んだ場合の家賃と、購入後の税金・金利・修繕・売却時の見込みまで含めた費用。資金を家に使わず残せる価値や、引っ越しやすさも忘れない。
家賃500万円は、確かに大きなお金だ。でも500万円で長年暮らせたのなら、その間に受け取ったものはゼロではない。
「家が手元に残らなかった」だけで損失扱いするなら、ホテルに泊まるたびに建物の権利書を要求することになる。 そんなチェックアウト、困る。
参考資料
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/keikakunintei.html
- 国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」:https://www.mansion-info.mlit.go.jp/
