仕事が「無限回廊」になるとき。夢占いより、完了条件を確かめる
出口は未定、閉館まであと30秒
仕事を、こんな架空のダンジョンにたとえてみる。
荒れ地にプールを造った。人が集まり、泳ぎ始めた。よかった、完成だ。ところが出口へ向かうと、「水質管理もお願い」という廊下が現れる。次は受付、その次は設備の点検。曲がるたびに仕事が増える。
そこで館内放送。「閉館まであと30秒です」
出口の設計はまだなのに、カウントダウンだけ妙に正確。走るべきなのは分かる。でも、どこへ。
この場面を仕事のたとえとして読むなら、気になるのは夢の暗号より「何を終えたら、終わりなのか」だ。
夢は職場の調査報告書ではない
無限の廊下を夢に見たからといって、誰かが責任を押しつけている証拠にはならない。「廊下は必ず仕事、扉は必ず退職」といった対応表も、ここでは使わない。
米国のNINDSの解説でも、夢を見る正確な目的は分かっていないとされる。
夢をきっかけに、自分の気になることを言葉にするのはいい。ただし、そこから現実の同僚の性格や会社の意図まで決めると、寝ている間に調査を終えたことになってしまう。
見るべきなのは、起きている時間の依頼や合意だ。
プールを造る係と、ずっと守る係
「仕組みを作った人が、そのまま全部面倒を見る」。そういう流れになりそうなとき、作る仕事と運用する仕事を分けて考えたい。
もちろん、作った本人が運用も担当する計画はあり得る。それなら、その時間や範囲まで含めて話をする。
困るのは、完成した瞬間に新しい担当が無言で追加されることだ。「開業おめでとうございます。では、あなたが永続的に監視員です」。祝辞に雇用条件の追加を忍ばせないでほしい。
英国HSEも、役割を明確にすることを職場のストレス管理で重視している。これは英国の枠組みで、日本の個別の法的権利を説明するものではない。
廊下を増築する前に、四つ聞く
相談の入口は、大げさな宣言でなくていい。
- 完了条件:「何を、どの状態で渡せば完了ですか」
- 判断する人:「完成の確認は誰にお願いすればいいですか」
- 追加時の調整:「これを加えるなら、どの作業を後にするか、どの期限を変えますか」
- 引き継ぎ先:「完成後の問い合わせや運用は、誰が担当しますか」
「頑張ります」だけだと、引き受けた範囲が人によって違うかもしれない。やる気の確認だけで、出口の位置まで決まるわけではない。
悪役探しより、認識のずれを見える形に
条件が曖昧でも、誰かがわざと困らせているとは限らない。頼む側も、完成後に何が必要になるか分かっていない場合がある。
話し合った内容を短く書き、互いの認識を確かめる。追加の依頼が来たら、前の合意と並べて、範囲や優先順位を相談する。
書けば必ず通る魔法ではないし、答えが出ないからといって必要な仕事を黙って放置する話でもない。判断する人に、未決の点と影響を見える形で渡す。そのうえで調整する。
廊下が増えた事実を共有することと、誰かを迷宮の魔王にすることは、別の作業だ。
30秒で人生まで決めなくていい
夢のカウントダウンに合わせて、退職するか、一生引き受けるかまで決める必要はない。
まずは、今の仕事の出口を一つ確かめる。何が完成で、誰が確認し、その先を誰が持つのか。
プールを造る力があることと、そこで永久に監視員をすることは同じではない。次の廊下を建てる前に、出口の図面を見せてもらおう。
