※『呪術廻戦』の「渋谷事変」までのネタバレがあります。『僕のヒーローアカデミア』にも軽く触れます。
虎杖たちが強敵と戦っている。もう無理かもしれない。
でも、読者の頭に一人だけ浮かぶ。
「五条先生、呼べばよくない?」
だって公式紹介でも「自他共に認める最強呪術師」。頼れる先生どころか、学校にいる最終兵器だ。
普通の学校なら、困ったときは担任へ相談する。『呪術廻戦』では相談先が強すぎて、敵の作戦そのものが変わってしまう。
敵は五条悟に勝つより、五条悟をいなくしたい
渋谷事変で敵側が狙ったのは、五条との正面勝負で勝ち続けることではない。封印して、戦いの場から外すことだった。
相手が強すぎて倒せないなら、参加できない状態にする。これなら力比べをする必要がない。
ここは作品内の作戦として筋が通っている。敵から見れば、五条が自由に動いている限り、計画を進めるたびに「五条が来たら終わり」がついて回る。
最強の敵への対策が、さらなる筋トレではなく「まず先生を欠席扱いにする」なのだ。欠席届の提出先が獄門疆。学校行事としてはだいぶ終わっている。
先生が全部解決すると、主人公の出番がなくなる
物語の側から見ると、もう一つの事情がある。
五条が毎回駆けつけ、敵を片づけ、虎杖たちを助けられるなら、読者はどんな危機でも同じ答えを思いつく。
「先生は?」
主人公が努力しても、作戦を考えても、最後に先生が勝てば解決する。これは気持ちいい。一方で、主人公が何を選び、どこで失敗し、誰を守るのかが見えにくくなる。
封印によって五条の強さが消えるわけではない。「五条に助けてもらえる」という安心だけが消える。
すると、残された人物たちが自分で決めて動かざるを得なくなる。最強の人がいないときに誰が何をするのか。そこから先が、ほかの登場人物の物語になる。
もちろん「作者がその理由だけで封印した」と断定はできない。ここは展開の働きを読者側から見た解釈だ。
最強の味方を退場させる方法は「死亡」だけじゃない
この問題は『呪術廻戦』だけではない。
『僕のヒーローアカデミア』のオールマイトは、力を使い果たして第一線を退く。生きていても、以前と同じようにすべての危機を解決することはできない。
『ドラゴンボール』の亀仙人は、弟子が成長して自分を超えても師匠であり続ける。「いつまでも先生が一番強い」とする必要がない。
封印する。引退する。弟子が追い越す。 方法は違っても、主人公たちが自分の足で戦う余地をつくれる。
だから「最強の味方は必ず死ぬ」という話ではない。強いまま生き残る人物もいるし、作品によっては最強主人公そのものが面白さの中心になる。
元の記事では30人の例を集めたが、好きな作品から選んだ30人の死亡数を、そのまま漫画全体の確率にはできない。ここで大切なのは何割死んだかより、頼れる最強を物語がどう扱うかだ。
一番危ない肩書きは「最強」より「いつでも助けに来る先生」
五条悟の立場を並べると、なかなか厳しい。
最強。味方。教師。若い術師を育てたい。しかも頼りにされている。
生徒からすれば大当たりの先生だ。敵からすれば真っ先に止めたい障害。そして物語からすれば、「先生が来れば終わるのでは?」という問いを毎回生む存在になる。
だから渋谷事変の封印は、敵の作戦としても、ほかの登場人物の物語を動かす出来事としても大きい。
敵「五条を止めないと勝てない」
生徒「五条先生がいないと困る」
読者「五条先生を呼んでくれ」
全員が先生のことを考えている。先生が最強すぎて、本人不在の会議が一番盛り上がる。
