「ショート動画を見すぎる人のために、やめ方をショート動画で教えます」
いや、その入口がすでにショート動画なのだが。
2026年8月、短い刺激を追い続ける人をからかうネット俗語「ドパガキ」とともに、対策を短い動画で紹介する投稿が話題になった。問題のある食べ物を控えるコツを、その食べ物の食べ放題会場で教えているようなものだ。
とはいえ、笑って終わりにするには惜しい。この作戦、入口としては案外筋が通っている。気になるのは、その先に出口があるかどうかだ。
罠に見えるのは、動画の中身ではなく「置き場所」
短い動画を一本見ると、すぐ次が流れる。さらに次。好みに合うものが続くほど、「今日はここまで」と決めるタイミングが後ろへずれていく。
そこへ「ショート動画をやめよう」という動画が出てくる。
教えている内容が正しくても、見終えた直後には次のおすすめが待っている。禁煙の説明書をタバコの自動販売機に貼るようなものだ。説明書を読んで感心したあと、そのまま買えてしまう。
「ドパをもってドパを制す」というツッコミが成り立つのは、言っていることと、それを見せている場所がぶつかっているからだ。
箱わなのたとえが妙にしっくり来る
兵庫県森林動物研究センターの箱わなの解説には、こんな手順がある。まず餌で動物の警戒心をほぐし、奥まで入るようになってから、しかけを動かす。
短い動画のおすすめ欄を「餌が次々に出てくる箱」だと思うと、笑ってしまうほど絵が合う。暇つぶしに一つ見て、次も見て、気づくと時間が消えている。
もちろん、人の動画視聴と野生動物の捕獲は同じ仕組みではない。行動をつかみやすくするためのたとえだ。それでも「箱の中で、箱から出る方法を教わる」という矛盾は強い。
箱わなを知らなくても大丈夫。出口を探している人のところに、入口の広告がもう一枚届く状態だと思えばいい。
それでも、ショートで伝える意味はある
長い説明を最初から見ない人にも、短い動画なら届くかもしれない。短い動画で注意を呼びかけること自体は、間違いではない。
ただ、「見てよかった」で終わると、そのまま次の動画へ流されてしまう。
本当に役立つ動画にするなら、見た人がその場でできる行動まで渡したい。たとえば「この動画が終わったらアプリを閉じる」「通知を切る」「寝るときはスマホを手の届かない場所に置く」。動画の外に出る出口だ。
「ドパガキ」は病名ではないし、ショート動画を楽しむ人が全員困っているわけでもない。大切なのは、やめたいときにやめられるか、睡眠や大事な予定を削っていないかだ。
短い動画は入口になれる。あとは、出口まで案内できるかどうか。
「ショート動画をやめる方法、続きは次のショートで!」
それだけはやめてくれ。罠の説明書が全12巻になる。
参考:兵庫県森林動物研究センター「捕獲する」 https://www.wmi-hyogo.jp/index.php/capture
