中古アパートの「利回り12%」に目が止まる。でも写真を見ると、屋根も配管も給湯器も「次は私の番です」と修理代の列を作っている。ならば安い土地に新築を建てればいいのでは?
発想は悪くない。ただし、古い建物の修理リスクが、新築では土地と建築費の見積もりリスクに変わるだけだ。新築だから自動的に儲かるわけではない。
土地500万円、これで勝ち……ではない
格安の土地を見つけた瞬間、もう勝った気分になる。ところが土地は、建物を建てられて初めて役に立つ。道路への接し方、使い道の制限、上下水道、地盤、造成費を確かめないと、価格の安さは幻になる。
特に農地なら、農地以外に使うための手続きと、そこに賃貸住宅を建てられるかどうかの判断は別。農地の転用ができても建築できるとは限らない。「土地は買えました。家は建てられません」が最悪のオチだ。
「いくらで建つ?」より先に「いくら家賃を取れる?」
数字を一つ置いてみよう。以下は相場ではなく、計算方法を示す架空の例だ。
1戸の月額家賃が6万5,000円、6戸のアパートを建てるとする。満室なら年間家賃は 6.5万円 × 6戸 × 12か月=468万円。土地代・建物・設計・配管・外構・税や手数料などを含む総事業費が6,600万円なら、広告に載せるような表面利回りは約7.1%だ。
でも満室が続くとは限らない。稼働率95%、入ってきた家賃の20%を運営費に使うと仮定すると、年間の運営利益は約356万円、総費用に対して約5.4%になる。これは借入返済や所得税などを差し引く前の数字。手元に356万円残る意味ではない。
つまり「表面12%の築古」と「表面7%の新築」を数字一つで決めると、修理費、空室、金利が全員あとから登場する。
新築の安心にも、条件がある
新築は最初の建物状態が分かりやすく、間取りや設備も入居者の需要に合わせて選べる。一方、工事費の上振れ、入居者の集まりにくさ、完成後の家賃下落は自分で引き受ける。
日本では新築住宅の主要な構造部分や雨水の侵入を防ぐ部分に10年の責任を定める制度がある。ただし、エアコンや給湯器まで何でも10年間無料交換という制度ではない。
結局、どちらが得?
答えは築年数より「無理のない家賃で総費用を回収できるか」で決まる。 土地を見る前に、周辺の家賃を調べ、空室や修理代、返済を引いてもお金が残る上限額を出す。その額より土地・建築・諸費用の合計が高いなら、安い土地でも見送りだ。
新築は「修理ガチャを回さずに済む近道」ではある。でもその代わりに「建築見積もりガチャ」が始まる。ガチャの名前が変わっただけで、無料にはならない。
※金額は説明用の仮定であり、投資の収益予測ではありません。法規制と費用は場所・計画ごとに確認が必要です。
参考:農林水産省「農地転用許可制度」 https://www.maff.go.jp/kanto/nouson/shinkou/nouchitenyou/index.html / 国土交通省「新築住宅の責任」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk1_000018.html
