デザートを食べに来たのに、原価を調べている
友達と食べ放題に来た、という場面を想像してほしい。一人は好きなデザートを楽しんでいる。もう一人は「あと何皿で元が取れる?」と、頭の中で計算を始めた。
同じ料金で同じ店にいるのに、一方は食事、もう一方は棚卸しで忙しい。ケーキも急に、味ではなく推定仕入れ価格で見られ始める。
値段に納得できるかは大切だ。ただ、「店を赤字にできたか」と「自分にとってよい食事だったか」は、別々の問いである。まず何をもって「元を取る」と呼ぶのかを分けたい。
仕入れ値、単品価格、払った金額は同じではない
食材を店がいくらで仕入れたか。料理を単品で頼んだらいくらか。今回の食べ放題に自分はいくら払ったか。この三つは、それぞれ違う数字だ。
たとえば「単品ならこのくらい」という想像の値段を足しても、店の材料費にはならない。実際の仕入れ条件や一皿の量も、客席からは分からないことがある。
皿の数を数えることはできる。でも、その数だけで「店にこれだけ損をさせた」とは言えない。計算を始める前に、入力する数字が見当で埋まっていないかを確かめよう。
店の売上は、材料費だけを払うものではない
店は食材を買い、調理して、席やサービスを用意する。人件費、家賃、光熱費なども運営の費用に含まれる。料金から食材費を引いた残りが、そのまま全部利益になるわけではない。
一定期間の売上と費用を見て計画することと、必ず利益が出ることも別だ。「食べ放題だから店が必ず勝つ」とは決められない。
年齢や見た目で「この客なら得」「この客は赤字」と分けるのも乱暴だ。ここで知りたいのは、隣の人の胃袋の採算ではなく、自分が選ぼうとしている食事の内容である。
自分がうれしかったことも、値段の判断に入れていい
好きな料理を少しずつ選べた。買い物や調理、片付けをしなくて済んだ。友達と食事を楽しめた。そういう点を重視するなら、材料の値段だけでは比べきれない。
もちろん、誰にとってもお得になるわけではない。予算を超えた、食べたい料理がなかった、落ち着いて過ごせなかった。それなら「自分には合わなかった」と感じてもおかしくない。
「体験にも価値がある」は、不満を黙らせる言葉ではない。何を楽しみに払うのかを、自分で考えるための材料だ。
比べるなら、実際に選べる別の食事と比べる
予約前なら、飲み物や追加料金も含めた総額を確認する。そのうえで、同じ日に選べる定食や単品注文などと比べてみる。食べたいもの、時間、席の使い方も含めて、自分たちに合うかを見る。
食べ放題の方がよい日もあれば、好きな一皿をゆっくり食べたい日もある。毎回どちらかを優勝させる必要はない。
食事中に満腹になったら、そこで食べるのをやめてよい。会計への納得を作るために、体に追加の注文を押し込む必要はない。
会計を済ませたら、店の決算まで引き受けない
冒頭の二人に戻ろう。好きなデザートを楽しめた人と、最後まで原価を計算していた人。皿の数だけでは、どちらの食事がその人に合っていたかは分からない。
確かめたいのは、予算の範囲で、期待したものを楽しめたか。もっと静かな店や少量の食事がよかったなら、次はその条件で選べばいい。
食べ放題で元を取れたかは、店を困らせた量だけで決めなくていい。自分の食事の会計を済ませたら、店の決算書まで完成させずに帰って大丈夫だ。
