食材を引いたら、もう利益?
架空の焼肉食べ放題店で、店長が売上から食材費を引いている。差額を見て「思ったより残った」と喜んだところへ、給与や家賃の支払いが頭をよぎる。
計算は間違っていない。ただ、計算が終わっていなかった。
食べ放題の仕組みを考える時、平均の食材費は役に立つ。しかし、その数字だけで「店が勝った」と言うのは早い。簡単な仮モデルを使って、どこまで分かり、何がまだ分からないのかを見てみよう。
まず、計算の条件をそろえる
ここでは、客1人あたりの売上を3,700円、有料の利用者を100人と置く。売上も費用も同じ基準で比べ、税金はこの説明用モデルの外に置く。
これは現在の相場や、実在店の税込料金を示す数字ではない。以下の食材費や人数も、計算方法を確かめるために置いた仮の値だ。
この条件なら、売上は3,700円×100人で370,000円になる。数字が細かく並ぶと実測結果のように見えるが、電卓が正確でも、入力した仮定が実際の店を表すとは限らない。
四つのグループを合計する
説明用に、利用者を仮の食材費で四つに分ける。年齢や体格、職業による分類ではない。
- A:20人×700円=14,000円
- B:50人×1,200円=60,000円
- C:25人×2,000円=50,000円
- D:5人×3,500円=17,500円
合計の食材費は141,500円。これを100人で割ると、1人あたり平均1,415円になる。
各グループの人数が違うので、四つの単価だけを足して4で割るのではない。それぞれの人数を掛けてから合計する。平均は、人数の違いも一緒に連れてくる必要がある。
また、食材費の違いは量だけとは限らない。選んだ料理や仕入れ条件でも変わるため、この表から誰が何皿食べたかまでは分からない。
原価率38.2%と、利益は別の数字
食材費141,500円を売上370,000円で割ると、この仮モデルの食材原価率は約38.2%になる。
売上から食材費だけを引いた差額は、228,500円だ。ただし、これは利益ではない。ここからまだ考える費用がある。
米国中小企業庁も、毎月の費用として家賃・給与・光熱費を挙げている。実際の店なら、ほかの費用も含めて売上と比べる必要がある。
38.2%という数字を出せたことと、それがその店にとって適切だと判断できることも別だ。未入力の支払いは、表の外で順番を待っている。
平均が同じでも、営業は同じにならない
この表は、100人が仮定どおりに来た場合の説明にすぎない。人数が変わる、特定の料理に注文が集まる、仕入れ値が変わる。それぞれ、見積もりを見直す理由になる。
廃棄する食材や、料理を補充する手間も見落としたくない。材料は足りていても、厨房が必要なタイミングで出せなければ、客席では待ち時間になる。
実際の記録を使うなら、売上と食材費の期間や集計範囲もそろえる。今日買った分をすべて今日使ったとは限らないため、仕入れの金額だけをその日の利用分と決めつけないことも大切だ。
仮モデルは、答えより質問を増やす道具
この計算で確かめられたのは、置いた条件の下では平均食材費が1,415円、食材原価率が約38.2%になるということだ。それだけで店の黒字は証明できない。
次に知りたいのは、実際の利用人数、食材の使われ方、食材以外の費用、店が無理なく提供できる量。仮の表を、その店の記録で確かめていく必要がある。
お客さんを「店に勝つ人・負ける人」に分けるより、店の側が自分の数字を正しく把握する方が話は進む。冒頭の店長も、差額を利益と呼ぶ前に、まだ机の上に残っている支払いを確認した方がよさそうだ。
