「来月の土曜、空いてる?」に「仕事次第だから、まだ分からない」としか答えられない。忙しいだけでなく、自分の休日なのに予定を決める権利がない。これが仕事をしんどくする理由の一つだ。
月40時間残業していても、土日が固定なら旅行の予約はできる。残業が月10時間でも、前日の呼び出しで予定が消えるなら友達にも約束しづらい。働き方を見るときは「何時間働くか」と「いつ働くか」と「自分で断れるか」を分けよう。
1. 残業40時間は、毎日どのくらい?
月20日働く人なら、残業40時間は1日平均2時間。定時18時なら20時まで働く計算だ。通勤、夕食、風呂、家事を終えたら、もう寝るだけ。平日に楽しい予定を入れにくくなるのは、気合い不足ではなく時間の問題でもある。
ただし、周囲がみんな40時間残業しているからといって「日本人の普通が40時間」にはならない。元記事が引用する厚生労働省の労働者調査では、2024年4〜6月の月平均残業時間が45時間以下の人は91.7%。ここでの区切りは45時間であって、40時間超の割合を示しているわけではない。[1]
友人や同僚が似た職種・会社に偏っていれば、身近に忙しい人が集中することもある。「周りはみんなそう」は、自分の周りについての観察であって全国調査ではない。
2. 休日の予定が読めない仕事は、どこがつらい?
一番困るのは、仕事をしていない時間まで「もしかしたら呼ばれるかも」と空けておくことだ。
たとえば、同じ休日でも次の二人では違う。
- Aさん:休日は土日固定。繁忙期だけ残業が増え、日程は事前に分かる。
- Bさん:休める日は毎月変わり、確定したあとも急に変更される。
Bさんは休日が少ないとは限らない。それでも、旅行の予約、友人との食事、習い事の申込みは難しい。カレンダーの空白が、予定を入れられる自由な時間とは限らないからだ。
不規則な勤務や予測できない勤務時間が、家族や友人との時間を確保しにくくすることは、勤務時間に関する研究でも論じられている。[2] ただし職種名だけで勤務の読みにくさは決まらない。同じ医療職やIT職でも、部署や当番制で大きく変わる。
3. 「仕事が好きだから残業している」と決めつけない
残業を引き受ける理由は、人によって違う。残業代が必要な人も、仕事が好きな人もいる。逆に、担当者が自分だけ、急な依頼を断りにくい、周囲も帰らない、といった事情で残る人もいる。
だから「毎日遅いなら、働くの好きなんだね」と聞いても、事情は分からない。
確かめたいのは、本人が選んで働いているのか、断れずに働いているのか。同じ40時間でも、自由度が違えば生活への負担も違う。
4. 予定を守れる職場か、五つ聞けば分かりやすい
転職先や配属先を調べるとき、単に「平均残業は何時間ですか?」で終わらせない。次も確認しよう。
- 来月の休日はいつ確定しますか? シフト制なら確定日が特に大事。
- 確定した休日が変わるのは、どれくらいありますか? 例外の多さを聞く。
- 休日の電話や連絡に対応する義務はありますか? 連絡が来るだけなのか、出勤が必要なのかを分ける。
- 急な依頼を断った場合、代わりの人はいますか? 個人の頑張りに依存していないかを見る。
- 直近の繁忙期はいつで、実際に何時間働きましたか? 年平均だけでは忙しい月が見えない。
予定が崩れたときは「気持ちの問題」ではなく、予定変更の頻度と、連絡が来るまでの余裕を記録してみる。漠然としたしんどさが、具体的な勤務条件に変わる。
5. 帰宅後「酒を飲んで寝るだけ」なら、休めている?
疲れて帰り、酒で眠くなり、寝て、翌朝また仕事。これで十分に回復できているとは限らない。
2025年の研究レビューでは、飲酒量が少なくても、睡眠の一部であるレム睡眠に変化が出る可能性が報告された。[3] 酒を飲んだ人すべてが不調になる、という意味ではない。飲酒だけで病気を決めつけることもできない。
ただ、「飲んだら眠れる」と「休めた」は別だ。帰宅後の回復時間まで仕事に削られ続けるなら、残業の数字以外にも目を向けたい。
長時間労働には健康面の懸念もある。WHOとILOは、週55時間以上働く人を週35〜40時間の人と比較し、脳卒中や心疾患のリスクが高いという集団研究の結果を示している。[4] これは個人の病気を予言する数字ではない。
6. 友人・恋人と約束できないとき、何を話す?
「忙しいんだから仕方ない」で終わると、会いたい側はいつまで予定を空ければよいか分からない。逆に、働いている側を責めてもシフトは変わらない。
大切なのは、できない約束を無理にすることではなく、分かる予定と分からない予定を分けて伝えること。
「来月は15日にシフトが確定する。その日に土曜か日曜で一つ候補を出す」「今週は急な呼び出しがあるから、遠出の予約はしない」なら、お互いの予定を守りやすい。
仕事を理由に約束が難しいことはある。それでも、分かった時点で共有する、変更したら代わりの日を提案する、といった調整の余地はある。
まとめ:自由時間は「空いている時間」だけではない
残業が少なくても、いつ呼ばれるか分からなければ休日の計画は立てにくい。逆に忙しい仕事でも、働く日が読めて断れる範囲が明確なら、自分の生活を組み立てやすい。
「1か月後の土曜日、約束できますか?」
これは土曜日に働く人を責める質問ではない。未来の自分の時間を、どのくらい自分で決められるかを見る質問だ。
「空欄なので暇です」ではない。会社が仮予約しているだけの空欄かもしれない。
参考資料(4件)
[1] 厚生労働省・時間外労働に関する調査資料(元記事の参照先):https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001462595.pdf
[2] Working Time Society、勤務時間と健康・社会生活についての提言:https://doi.org/10.2486/indhealth.SW-4
[3] 飲酒と睡眠に関する研究レビュー:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39631226/
[4] WHO・ILO「長時間労働と心疾患・脳卒中」(2021年):https://www.who.int/news/item/17-05-2021-long-working-hours-increasing-deaths-from-heart-disease-and-stroke-who-ilo

