入金通知の次に、修理の連絡が来る
スマートフォンに家賃の入金通知が届く。うれしい。その後、「給湯器の調子が悪いのですが」と連絡が来る。今度は、誰に確認してもらい、どこまで修理を頼むかを考える番だ。
これは架空の場面だが、賃貸物件の直接所有を考えるときに、入金だけでは見えない部分を示している。振り込みが自動でも、その周りの仕事まで全部自動になるわけではない。
もちろん、所有者が毎日忙しく走り回ると決まっているわけでもない。物件の状態や契約、管理体制によって、手間は違う。ここでは日本の住宅などを直接貸す場合を扱い、REITなどの金融商品とは分けて考える。
家賃、手元のお金、税金の計算は分ける
国税庁は、不動産所得の金額を総収入金額から必要経費を引いて計算すると説明している。
この税務上の名前を、「働かなくてよい」という意味に読み替えることはできない。また、入金された家賃の全額を、そのまま自由に使えるお金だと考えるのも早い。
確認したいのは、実際の入金と、これから出ていくお金だ。管理の費用、保険、税金、修繕などについて、金額だけでなく、支払いの時期も並べてみる。大きな修理代が、毎月きれいに十二分の一ずつ届くとは限らない。
借入を使う場合は、元金の返済と利息を区別する。元金返済で現金は減るが、会計上の費用と同じ扱いではない。利益と資金繰りは別に確認したい。修繕などの税務処理も一律に決めず、必要なら税理士へ確かめる。借入なしで所有する場合もある。
表の一行には、何人分かの仕事が入っている
たとえば入居者が退去する。必要な確認をし、次の募集に向けて何を整えるかを考え、見積もりを取り、日程を調整する。こうした作業は、収支表では短い項目に収まる。
だが、その一行を現実に進める人が必要だ。所有者が行う場合もあれば、管理会社や専門業者が担う場合もある。見えないから仕事がないのではなく、別の人が適切に引き受けていることもある。
そこで暮らす人を、利回りを動かす部品のようには扱わない。連絡や立ち入りなどは、入居者の権利とプライバシーを尊重して、契約や必要な手続きに沿って進める。専門性が必要な修理を、節約だけを理由に自分で試す必要もない。
任せれば楽になる。何を任せたかは確認する
管理を委託するのは、手間を減らす有効な方法になり得る。ただし、「全部お任せ」という言葉だけでは、困ったときの担当者までは分からない。
給湯器の例なら、最初の連絡は誰が受けるか。緊急対応はどこまで認められているか。追加費用や交換の見積もりは誰が確認するか。完了したことは、どのように報告されるか。実際の契約で整理しておきたい。
所有者に残る判断を、別の専門家に相談することもできる。すべての作業や責任が必ず一人に残る、と一括りにはしない。具体的な役割や義務は契約と法令によるため、不明なら独立した専門家へ確認する。
報告の頻度や費用、担当者が不在のときの窓口、委託先を替える場合の引き継ぎまで考えると、「任せる」が少し具体的になる。
苦労した量は、利益の保証書にならない
金融庁は、賃貸事業の長期的な計画とリスクを検討する重要性を示している。
ここで気をつけたいのは、「仕事を頑張れば、その分だけ儲かる」と言い換えないことだ。管理を整えていても、想定と違う支出や収入の変化はあり得る。適切な対応をしても、損失が出る可能性は残る。
所有する物件が多いことだけでも、利益や運営の質は分からない。外から見える件数を、そのまま成功の成績表にはしない。
売りたい時期に、希望する価格で売れるとも限らない。借入があれば、その条件も含めて考える。どの程度の資金を用意すれば必ず安心か、という共通の正解があるわけではない。
「何もしない予定」より、一か月の予定を書いてみる
検討のために、架空の一か月の予定を作ってみる。入金を確認する日、管理の報告を見る日、必要な支払いを確かめる日。そこへ、予想外の修理が一件入ったと仮定する。
誰が動くか、自分が確認する時間はあるか、有料の支援を頼むなら費用をどう見るか。分からないところは、分からないと書く。これは将来を予測する表ではなく、見落としている作業を見つけるためのメモだ。
その仕事を自分で持つか、支援を整えるか、今回は見送るか。どれも検討できる。対人調整が苦手だから失格、所有しているから立派、と人物を採点する必要はない。
この記事は一般的な考え方で、購入や借入を勧めるものではない。個別の資金計画、税務、契約は、必要に応じて独立した適切な専門家に相談してほしい。
家賃の振り込みには、自動化できる部分がある。給湯器は、故障しただけでは修理依頼書を書いてくれない。その間を誰がつなぐのかまで見えると、入金通知の意味も変わってくる。

