概要: 獣人は魅力的なのに現実の動物は別物。モフモフ・女性らしさ・性的魅力の関係と、実際のアンケートが何を測ったかを検証する。
毛むくじゃらの獣人を見ると、「モフモフして温かそう。しかも妙に魅力的」と感じる人がいる。ところが本物のキツネを見ても、普通は「かわいい動物だね」で終わる。
毛皮は同じなのに、脳内の判定が違いすぎない?
この違和感の鍵は、部位の形より「相手を全体としてどう受け取るか」にあるかもしれない。顔、体形、表情、しぐさ、話し方、性格。そこに毛並みが加わると、魅力的な人物と高級毛布が同時に立候補してくる。
では、人間らしさは何%あれば性的に魅力的なのか。調査を見ていこう。
「かわいい」「抱きたい」「性的に惹かれる」は分ける
ケモナーは、動物を人間らしく描いた架空のキャラクターや、その創作・交流を楽しむ文化と関係する言葉。動物耳のある人間風の姿から、獣の顔を持つ人型のキャラまで幅広い。
毛皮が好き、ぎゅっと抱きしめたい、恋愛対象として魅力的、性的に惹かれる。これらは別の反応で、重なる人も重ならない人もいる。実際の動物への性的関心とは、研究でも分けて尋ねている。[1]
獣人8.51点、現実の動物2.14点
2019年の論文では、ネットで募集した男性ケモナー334人の回答を分析した。0~10点の性的魅力の評価で、人間のように描かれた動物キャラの平均は8.51点、現実の動物は2.14点だった。[1]
差は大きい。ただし、現実の動物への評価が0点を超える人も46.7%いた。「全員が現実の動物にはゼロ」という話にはならない。男性をネットで募集した研究なので、すべてのケモナーへそのまま一般化することもできない。
架空のキャラは毛や耳だけでできていない。感情を伝え、会話し、物語のなかで関係を築く。解剖学の部品表が似ていても、人が受け取る全体像は別物になる。
「99%が性的」なのに「約10%だけ」? 数字が喧嘩する理由
先ほどの男性334人の調査では、99%がケモナー活動に少しでも性的動機を感じると答えた。[1]
一方、FurScienceの別の2019年調査では、ケモナーであることが主として性的な好みだとする人は約10%。[2] 2011年の調査では、約3分の1が性的魅力を参加の重要な理由に挙げ、約4分の1はほとんど関係ないと答えている。[3]
99%と10%、どっちだよ! と思うが、聞いていることも対象者も違う。「少しでも関係ある」と「趣味の中心である」は別の質問だ。ラーメンが好きな人が全員ラーメン店主になるわけではない。
「人間何%」のアンケートはあった。でも別の質問だった
FurScienceが紹介する2016年の調査では、自分の獣人アバターの姿を1(普通の動物に近い)から7(強く人間らしく描かれた動物)までの段階で評価してもらった。大多数は人間らしい姿に寄っていた。[4]
ただし、これは自分で選んだキャラの見た目を聞いた調査。「人間60%なら性的に魅力的」「獣度70%で失格」といった境界の実験ではない。ネットの獣度ランキングと研究の数字は分けて読みたい。
本気で調べるなら、耳・顔・輪郭・体形・毛並み・人格を変えた絵を見せ、「かわいさ」「触れたい」「恋愛したい」「性的な魅力」を別々に採点してもらう必要がある。好みの最適値は人によっても、質問によっても違うはずだ。
興奮と嫌悪感は、見た目の部品だけで決まらない
「女性らしい全体像に、毛並みの気持ちよさが足される」という考えは一つの仮説になる。ただし、人によって魅力を感じる性別の表現も、声や性格などの重みも違う。
2023年の実験では、先に性的な映像を見た男性は、あとで示された性的な体液への嫌悪感を低く報告する傾向があった。[5] 2004年の総説では、思春期の脳やホルモンの変化が性的な刺激の意味づけに関係すると説明されている。[6]
これらはケモナーになる原因を直接調べた研究ではない。性的な魅力と嫌悪の関係は状況によって変わりうる、という補助線として使うのが正確だ。
結論:脳に「人間65%、キツネ35%」の配合表はない
確認できたのは、獣人と実際の動物への性的魅力の差、性的な関心がどれほど重要かの個人差、そして自分の獣人キャラの見た目を測った7段階調査だ。
答えを探すなら、人間の割合ではなく、どの特徴が、どんな種類の魅力を生むかを分けて見るほうがいい。
「めっちゃタイプ」と「冬に抱いたら温かそう」が同時に来ることはありそうだ。でもそれを一つの獣度メーターで表示しようとするのは、温度計で恋心を測るようなもの。
測れたのは愛ではなく、毛布の保温性能かもしれない。
参考資料(6件)
[1] Hsu & Bailey (2019), The “Furry” Phenomenon, Archives of Sexual Behavior
[2] FurScience (2019), Furry as Fetish
[3] FurScience, International Online Furry Survey: Winter 2011
[4] FurScience, Fursona Species Popularity and Anthrocon 2016 scale
[5] Bidirectional relationship between sexual arousal and (sex-related) disgust (2023), PLOS ONE
[6] Sisk & Foster (2004), The neural basis of puberty and adolescence, Nature Neuroscience
